銀次郎は、灰田と一緒に秋葉原の投資顧問会社「青春館」に向かった。
銀次郎のかばんの中には1500万円の小切手が忍ばせてあった。
約束の午後2時に2人は、青春館の受付の前にいた。
受付の手前は円卓が5つ並んロビーになっていて、何組かが商談の最中だった。
入り口の直ぐ左にある部屋は素通しのガラスがはめ込まれていて、中の様子が一目で分かるようになっていた。
何台ものコンピューターが並んでおり、時々刻々と株価の動きを吐き出していた。
受付嬢に訪問の目的を告げると、彼女は内線で社長に連絡を取っているようだった。
2人は3階の社長室に案内された。
「よくいらっしゃいました。お待ちしておりました。社長の東山です。
話は灰田さんから伺っております。
この度は、私どもの外国為替証拠金取引に協力していただけるそうで、有り難うございます。
今この取引に参加されている方は1000人を越えました。
最低一口100万円ですから、それなりのお金を運用させていただいております。
バブルが崩壊して株価が低迷しているときでも、
確実に利益を上げて配当を出していましたから、投資家が付いてきたんです。
毎月5%の運用利回りを計上していますから、年間では60%になりますよ。
最初のうちは皆さんおっかなびっくりだったようですが、
儲けたお金をつぎ込んで、最近では1億円以上の大口の方も、10人超えました。
私どもは村上ファンドのような派手な事はいたしませんが、堅実に儲けを出していますよ。
ですから、私どもがこれはいいとお勧めすれば、
ワインファンドのように経験のないものでも、参加してくれますよ。」
東山社長は70歳に近いと思われるが、肌の色艶もよくどう見ても60歳ぐらいにしか見えない。
「金山社長はどんなお仕事なさっておられるのですか?」
「過去には色々やってきましたけれど、今はお酒の関係ですね。
プレミア付きの日本酒とか、ワインの輸入も少しやってます。
それと、今は灰田さんと組んで、アルゼンチンワインのファンドを仕掛けているところです。」
「そうそう、あのファンドはいいですね。実にいいところに目をつけられた。」
「いや〜、目を付けたのは灰田さんのほうで、私はただ乗っただけですよ。」
といって、銀次郎は灰田をヨイショした。
「ところで、金山社長さんは、朝は何時に起きられますか?」
「私ですか。私は結構早いですよ。4時には起きてますね。
それから新聞をじっくり読むんですわ。」
「さすがに、頑張っている社長さんは、朝起きるのが早いですね。
私なんか朝3時半に起きて、会社には7時には出勤してますよ。
必ず部屋の掃除と机の雑巾がけをして、それからパソコンを開いて、
資料を作るんですよ。」
「この資料は、僕が全部作ったんですよ。」
といって、机の上のA4判のプリントや小冊子を取り出した。
「私はパソコンを15年やってます。
55歳のときに始めました。
社員に資料の作成を頼んでも、遅いし、期待通りのものが仕上がってこないものだから、
自分で作る事にしたんですよ。
お陰で、頭もぼけませんよ。
社員は煙たそうですがね。
でもね、うちぐらいの規模では、社長自ら動かないと社員は付いてきませんよ。」
「さすがですね。御見それしました。これは、15口分の1500万円の小切手です。」
といって、かばんの中から、額面1500万円の先付け小切手を取り出し、東山社長に手渡した。
「有り難うございます。うちは色々事業やっていますから、
是非うちと組んで大儲けしましょうよ。
失礼ですけど、社長もそんなに若くはないようですから。
今仕掛けている事業は面白いですよ。
皆が『あっ』といって驚きますよ。
今日は時間がないので、今度お会いしたときにその話をしましょう。」
銀次郎は東山社長と固く握手をして、「青春館」を後にした。
帰りの電車の中で、銀次郎は感心していた。(灰田の交遊は多岐に渡っているな。いろいろ使わせてもらうか。)
第六章-第9話 時限爆弾(4)へ続く


と言うよりは、全てを空想で書ききれるほど、私の想像力は豊でありませんので、ある程度のモデルは存在しています。
私も、どっかでもぐりこませていますよ。