「ところで、もっと効率よく出資者を集めたいんだけど、ナベちゃん協力してもらえないかな。
それなりに御礼はするからさ。」
と灰田が言ってきた。
「協力って、ワシに出来るかね?」
「なに、大した事じゃないですよ。小切手貸してくれないかな。」
「紙なんか何に使こうの?」
「大口の投資家がいるんですがね、そこは投資顧問会社をやっていて、
バーター取引じゃないけどわが社がそこの会員になることが条件なんですよ。
その会社の会員は1000人以上いますから、その会社がファンドに加わって、
ワインファンドを紹介すればその仲間が芋づる式に投資してくれるんで、
5億は確実に集まるんですよ。
ナベちゃんには色々世話になってるし、このグループの投資総額の10パーセント分配しますよ。
悪い話じゃないでしょう。」
灰田の話を聞いて、銀次郎の好奇心がにわかに活気づいた。
「何ぼいるの?」
ピーマン信金から融資が出たのか、銀次郎のガードが甘い。
「1500万程お願い出来たらありがたいんだけどね。
絶対迷惑は掛けませんから。
先付けで、再来月の15日の日付でお願いしますよ。
来月の末にまとまったお金が入りますから、その時に手数料を含めて、
1700万円振り込みます。
それが済んでから小切手を落としますから安心してください。
お礼といっちゃ何ですけど、格安のマンションを紹介しますよ。
ローンが2000万ほど焦げ付いた事故物件ですけど、評価額は3600万円ありますから。
200万円で名義を書き換えますよ。
何人かの名義に書き換わっていますから、善意の第三者で十分通用しますよ。
後は言わなくても分かるでしょう。
上手くやってくださいよ。
事務所にしても良いし、換金してもいいですよ。」
灰田は笑いながら言った。
「分かったよ。その話乗るよ。
ワインファンドの話はこちらでも感触がいいんで、楽しみにしているんよ。
久々に燃えてるよ。
ワシも銘酒パブとワインファンドで実業の世界で飯が食えるようになりそうだよ。」
そうなんだ。銀次郎さん実業家を目指してたんだ。御見それしました。
銘酒パブ1号店の名前は土壷に決まった。
「ヒノキの1合枡はカッパ橋で仕入れてよ。ついでに気の利いた器も頼むよ。」
「それと、帰りにDIYに寄って、ヒノキの板を買ってきてくれる。
のこぎりとかんなも頼むよ。木工用ボンドも。」
「そんなもの何に使うんですか?」
「秘密の細工をするんや。
1合枡の内底に板を一枚貼り付けるんや。
そうすると1合枡が8勺(しゃく)(0.8合)枡になるやん。
枡に注いでやるとき、受け皿にこぼしてやらなんだら、納得せんがな。
酒飲みはそうゆうとこ五月蝿いねん。
せやから、こぼしても10杯採れるように細工をしとくねん。」
「なるほどね。銀次郎さんそんな小技何処で覚えたんですか?」
「昔な、これに店持たせたことあんねん。」
といって、小指を立てた。
第六章-第8話 時限爆弾(3)へ続く


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昔、そんなことやっている焼き鳥屋の女将さんがいたのを思い出して、使わせていただきました。
大雑把なようで、変に細かいところに気を使う、そんな銀次郎にしたいのです。