このところ銀次郎は、頻繁に灰田と会っている。
よっぽどおいしい話があるのか、銀次郎は嬉々として東日本橋に足繁く通うのである。
事務所に帰ってくるなり、
「大したものだ、灰田は。」と灰田の事を褒めちぎる。
「風祭ちゃん、ここにワイン1000本の請求書送ってくれる。1本1000円だから消費税込で105万円ね。」
と言って、住所の書かれたメモをよこした。
「如何したんですか?売れたんですか?」
「ああ、灰田が売ってくれたんや。頼りになる奴っちゃ。」
メモには、山口タウンスペースと書かれてある。
「山口タウンスペースって何ですかね?」
「無料のタウン紙を発行していて、向こうでは15万部出てるらしいよ。
1軒1軒ポスティングするので精読率が高いらしい。
この辺で発行されている『ショッパーズ』みたいなもんだよ。
そこのオーナーと灰田が幼馴染ででタダで広告載せてくれるんや。
今までの実績で1000本ぐらいわけなく売れるからというので、送ってくれって言うんや。
次は日本酒載せてくれるって言うから、原稿作ってよ。」
「どの酒載せるんですか?
山口県は結構良い酒ありますよ。わざわざプレミア付きの酒呑みますかね。
金光酒造の山頭火なんか2年連続で金賞受賞してますからね。」
「そりゃ〜、やっぱり寒梅と万寿やろ。
この二つは全国区やから、何処でも通用するよ。」
風祭は、パソコンのイラストレーターのソフトを使って、原稿を作った。
イラストレーターで作っておけば、そのままCDにコピーして渡せば、加工は簡単に出来てしまう。
デザイン関係はマックを使って作るものが多かったので2台のパソコンを使う人が多かったが、
最近はウインドウズでも作る事ができるようになったので楽になったと風祭は感心していた。
「銀次郎さん、原稿できましたよ。どうしましょうか?」
「じゃあ、一緒に東日本橋行ってくれる?」
「構いませんけど、どうせ暇なんだし。」
「今、灰田ちゃんに連絡入れておくから。」
風祭は、如何すればいいのか聞いていなかったので、プリントアウトした原稿とデザインをCDにコピーしたのと両方用意した。
2人は受付嬢が3人いる事務所ではなく、直ぐ近くの純喫茶『サボール』で灰田と待ち合わせをした。
「悪いね。会議室全部ふさがっててね。」
「儲かっているんだね、会社。」
「いやあ、大したことないよ。」
「日本酒の原稿を持ってきたよ。よろしく頼むよ。」
「お預かりしておきます。」
「CD渡しでよろしいんですか?
手直しがあったら言ってくださいね。
細かい指示を頂いてないものですから、スペースとか、
写真の点数とか分からないことが多かったものですから。
それと、紙面のバランスも皆目分かりませんでしたので。」
「大丈夫ですよ。向こうはプロですから。これ渡しておきます。」
風祭は、適当にあしらわれているようで、若干の不安を感じた。
「ところで、灰田ちゃんにはいくら払えばいいんですか?」
「私ですか。山口の件はいいですよ。
まあ、一度どこかでいっぱいご馳走していただけば、それで結構ですよ。
ナベちゃんには迷惑の掛けっぱなしですから。」
「嬉しい事言ってくれますね。それじゃいい店予約しておきますよ。
それと、今度吉祥寺で銘酒パブやることにしましたから、一度遊びに来てくださいよ。」
「そうなんですか、それじゃ是非寄らせて頂きます。楽しみだな。」
「ところで、ワインファンドのほうはどうですか?」
「今盛んに募集してますよ。評判いいですよ。
来週には青木と仙台に行ってきますよ。」
「仙台ですか?いいとこですよね、仙台は。リタイヤしたら私は仙台に住みたいと思ってます。」
「青木は仙台の高校出身で、同級生が地元で結構活躍しているようで、
そいつに声をかけたら、何口かまとめてくれることになったんや。
青木だけに任しておくとあいつ何を言い出すか分かったもんじゃないから、一緒に行って来るよ。」
「そりゃ、そのほうがいいですね。
ここにいないから言いますけど、青木さんって、暴走しちゃう事がありますから。
誰か手綱を握ってないと、大変な事になりますよ。
そうですか、ナベさんが行ってくれるんですか。
そいつはありがたい。僕のほうも、昨日までで、約3億集めましたよ。」
「へえ〜、3億ですか。凄いですね。
この間の話があってから、まだ2週間しか経っていませんよ。
すごいな。なっ、風祭はん、凄いやろ。」
「ヨーロッパの銘醸ワインでなくても、やり方でファンドを集められるんですね。恐れ入りました。」
と風祭はあっけに取られていた。
第六章-第7話 時限爆弾(2)へ続く


す、すごいですね
銀ちゃんが心配。。。。
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鋭いです。
銀ちゃんどうなるか心配ですよね。