有限会社U.S.O企画の当座口座には普通口座に比べて、取引企業の数が3倍に増えていた。
それに平行して、黄山のATMで見かける頻度も多くなっていた。
「末成はん。いてはりまっか?」
「これはこれは、金山社長。どうなさいました。」
「一寸相談に乗ってくれるかな?」
「どういったことでしょうか?」
「実は今度日本酒に力入れようと思ってね。」
「日本酒ですか?」
「今まで、満天クラブでアルゼンチンワインを販売していたんやが、
今度どうしても日本酒をやってくれって言われましてね。
やるからには、中途半端じゃ面白くないでしょう。
色々こちらから提案も出してOKもろうてるんですよ。」
と言いながら、銀次郎は陳列棚から化粧箱に入った日本酒を取り出した。
「末成はん。この酒呑んだ事あります。」
「久保田万寿って書いてありますね。
名前は聞いた事ありますが、呑んだ事はございません。
高そうなお酒ですね。」
「そお、呑んだことないの。
これ美味しいよ。1本お土産に上げますよ。
じっくり味わってください。」
「久保田って、確か新潟の酒ですよね。
この間の、中越地震で酒蔵が被害を受けた映像をニュースで見ましたよ。」
「新潟は米どころだけあって、酒も美味しいですよ。
今日本酒は焼酎に押されて人気が下がっていますけど、
根強い人気の日本酒も有るんですよ。特に新潟の酒は。」
「私は日本酒はあんまり呑まないんですけど、そうなんですか。」
「末成はんは、ヤフオクなんてやらはります。」
「いや〜、やったことないですね。」
「そやな、銀行員さんやから、そんなのには手ェ出しはらへんな。」
「そうじゃなくて、やり方がわからないんですよ。」
「ワシもやらんけどな、このオークションで高値で落札される酒ちゅうのがあるねん。」
「どんな酒ですか?」
「今言うた久保田の万寿やろ、それから越乃寒梅、影虎、八海山、十四代などは定価より高く落札されているよ。」
「そうなんですか。」
「酒の利幅ってそんなに無いんよ。
普通2割5分しかあらへんねん。
ところがプレミアムの酒はもっと利益が出るんよ。」
「風祭さん、ネットでプレミアムの日本酒見てもらえます。」
「いいですけど、何を調べましょうか?」
「寒梅の別撰と久保田の万寿調べてくれる。」
「えーと、万寿ですけど1.8リットル定価8190円で楽天価格が13120円です。
高いのだと14000円超えてますね。寒梅は・・・」
「まあ、ええわ。凄いでしょう。末成はん。
定価で買うても、3割は儲かりまっせ。
馬鹿馬鹿しくて普通の酒なんかやってられませんよ。」
「いやあ、凄いですね。」
「特に、新米が出てから年末にかけてはドンドン値上がりするよ。
そのときになって買おうとしてもとても集められもんじゃない。
全国からブローカーが殺到するんやから。」
「特に久保田は『全国久保田会』という会を作って、酒屋を完全に組織化しとる。
なんたって生産量の9割方を割り当てして決めてしまうのだから、メーカーとしては安泰なわけや。
定価販売を徹底させていて、横流しなどの違反があれば荷をストップされてしまうから、
酒屋も言う事を聞かざるを得ないというこっちゃ。
全ての久保田会メンバーが順調に商売できているわけではないし、
特に夏場は日本酒そのものの売上が下がる時期だから、
在庫の処理に困っていると言う事情もあるわけや。
せやから、ワシらが商売できる下地もあるちゅうわけや。
その頃からせっせと買い集めておれば、義理があるから秋ごろから一見(いちげん)のブローカーが来ても、
そいつらには売らんでワシらに回してくれるのや。
そのために、仕入れる資金が必要になるんや。」
第五章-第17話 ピーマン信金【融資】(2)へ続く
銀次郎がここまでに使わされたお金の累計・・・1650万円


追いつきました。
焼酎も同じなんですよね〜
このリアリティは半端じゃないですね。
すごいです。
はい、一寸取材しました。
面白かったです。
あんまり想像では書きたくないんで。