酒好さんは、銀次郎の1000万円をすっかり当てにしている。
何しろ1000万円あれば、PM(プラチナメンバー)になって、
年間360万円の宣伝協力金をもらえるわけだから、
自由に使えるお金が30万円入ってくる事になる。
日常の、食料品は米、味噌、醤油から卵、野菜まで、衣料品だって化粧品だって
欲しいものはほとんど満天で買えるから、日本円が減る心配は無い。
女一人の生活だから、毎月8万円の家賃と、光熱費と交通費など諸々合わせても、
20万円もあれば楽に暮らして行ける。
何しろ、アルゼンチンワインは1本1200満天で仕入れて、
4500満天で販売しているわけだから、3300満天が儲かる仕組みになっている。
銀次郎さんは、15000本保証してくれたから、約5千万満天になる。
宣伝協力金が入ってくるわけだから、満天を日本円に両替する必要は無い。
自分の上の小鳥遊(たかなし)さんに御礼をしないわけにはいかないが、
4千万満天が手元に残る勘定だ。
今は、小鳥遊さんの下にいるけど、私もPMになれば立場は同等よ。
そうしたら、いつまでもあんなしみったれの小鳥遊さん元にいる必要なんて無いわ。
これで私も報われるわ。
などと調子の良いことを想像して、一人ほくそ笑む酒好であった。
もとより、銀次郎には1000万円などというまとまったお金など無い。
近々まとまったお金が入ってくるという話も聞かない。
先日のパーティーのときはお酒が入っていて、気が大きくなり安請け合いをしてしまったのだ。
本当に、銀さんはお酒と、お金が入ると人が変わってしまうんです。
そういえば、お金はまだ入ってきていませんでしたね。
そのうち、ドカーンと入ってきますから。(ホントかな)
銀次郎のことをあまり知らない酒好は、
アルゼンチンワインの輸入販売元に銀次郎の会社の名前が印刷されているのを確認して、
あのワインは銀次郎のものだと一人で思い込んでいた。
本当は、酒の免許が無いと通関が切れないと言うので、
単に名義を貸しただけなのであるが、ワインボトルを見れば、
事情を知らないものは誰でも、銀次郎の会社のものだと錯覚するのは当たり前であろう。
酒好もその口で、アルゼンチンからワインを輸入する会社の社長と知り合いになれたことを、とても幸運に思っていた。
(あの社長なら、1000万円ぐらい何とかしてくれるわ。
上手く取り入ってスポンサーになってもらおう。
そのためなら体を任せてもいいわ)などと、あらぬ瞑想にふけるのだった。
一寸待ってよ、銀次郎さんにも選ぶ権利はあると思うんですけど。
一方銀次郎はと言うと、満天倶楽部に取っ掛かりを作ったことで、
本丸に乗り込むことを思索していた。
(満天倶楽部とのパイプを太くして、ゴッソリ儲けさせて貰うで!!
そのためには、酒好にワインを広めてもらわな)
「銀次郎さん。驚きましたね。満天倶楽部。」
「金有も面白いところを紹介してくれたよ。
あいつは商売は下手だけど、いろんなことを知っとるな。
生き字引みたいな奴っちゃ。」
「僕も今までいろんなワインを扱ってきましたけど、あんなことは初めてですよ。
今でも信じられませんよ。
アルゼンチンワインがたった2時間足らずで60ケースも売れちゃうなんて。
それも無名のワインですよ。まあ、味はそこそこでしたけどね。」
「それでや、ワシ良えこと思いついたんや。」
「良いことって何ですか?」
と風祭が聞いた。
「まあ、あせらんでも。それより今夜は用事ないの?」
「いやあ、今のところありませんよ。」
「ほな、鳥七に行こうよ。」
と言って、銀次郎は風祭を階下の居酒屋鳥七へ誘った。
第五章-第10話 会員互助会『満天倶楽部』(10)へ続く
銀次郎がここまでに使わされたお金の累計・・・1650万円


銀ちゃん、何を思いついたんでしょ
みんなの思惑が入り乱れて
どうなるのか、わくわくですね〜