銀次郎は大場会長の講演を聞きながら、いつの間にか寝てしまっていた。
金有と風祭は、商売のネタになる話があるかなと、必死に眠気を堪えて聞いていた。
一体全体、この大場会長の何処に宗教団体の教祖様のような、
カリスマ性が潜んでいるのだろうか。
金有は必死でその答えを捜し求めたが、見つからないままに、
会長の講演は終わってしまった。
講演会場は、直ぐ片付けられてパーティー会場に模様替えするため、
皆はいやおう無く一時ロビーに出される羽目になった。
銀次郎、金有、風祭の3人は手持ち無沙汰でロビーの片隅で屯していると、
酒好さんが興奮しながら近寄ってきた。
「如何でしたか?すごいでしょう。」
「私、これにかけるから。金有さんも、頑張りなさいよ。」
などと、捲くし立てる。
会場設営までに1時間ほどかかる為、ロビーは会員達であふれかえっていた。
「圧倒的に女のほうが多いな。」
「結構、ケバイですよ。衣装も、化粧も、宝石も皆派手ですねえ。」
「そこそこ小金は貯め込んでいそうですね。」
「大場会長は幾らぐらい集めたんだろうかね?」
「さあ、一寸想像できないけど、経費だけでも2桁は行くんじゃないの。」
「金有さん。秦右時(はたゆうじ)って知ってる?」
「1600人から320億円集めたって奴ですよね。」
「そうそう、架空の投資顧問会社をでっち上げ、
豪華クルーザーによる地中海ツアーに顧客を招待し、
架空の投資話で320億円を騙し取ったって言うんですが、
あるとこにはあるんですね。」
「大方、このグループにしても、会員の出したお金で運営されているのだろうが、
経費も半端じゃないから、相当のお金が動いていそうですね。」
「この会員を相手にした商売を何か考えましょうよ。」
こんな会話をしていると、
『会場の準備が整いました。どうぞパーティー会場へお入りください。』
と言うアナウンスが流れた。
会場には円卓が整然と並べられており、座る席が決まっていた。
3人と酒好さんは同じ円卓にセットされていたが、小鳥遊さんは別の円卓だった。
10人掛けの円卓の数は100卓を裕に超えて、会場の外にまで臨時の席が設けられていた。
九州鹿児島県から出席していた、プラチナメンバー男性会員の乾杯の音頭でパーティーが始まった。
出席者の6割以上が女性だが、こういう役割はまだまだ男の仕事のようだ。
フランス料理とカラオケの組み合わせは、ミスマッチのような気もするが、
そこは中年以上の女性が大半の集まり、
中にはど派手なステージ衣装まで用意して歌う人もいるから恐れ入った。
彼女の場合、端から歌う予定で参加していたと言うことであろう。
後で聞いた話だが、彼女は大阪から来ているという。
参加者の女性に聞いてみると、現在はシングルという方が圧倒的に多い。
離婚や死別など何らかの理由で連れ合いがいないようだが、
皆さん暗い影は微塵も無い。
明らかに、今が最高、今を謳歌しているということがひしひしと伝わってくる。
嘘か本当か、風祭の隣に座った女性は、一晩限りのアバンチュールをと誘いをかけていた。
風祭に、問いただすと、
「勘弁してくださいよ。いくらお金に困っているからと言ったって、
僕だって選ぶ権利はありますよ。あの女性幾つだと思います?」
なんだ、そこまで聞き出していたのかい、風祭さん。
「50代かい?今の女性は、50代ならピチピチだよ。」
「とんでもハップン。とうに還暦は過ぎてますよ。
厭ですよ、僕だって。いくら妊娠しないからっていっても。」
今日の費用は、全て満天倶楽部の親会社持ちだというから、大変な大盤振る舞いである。
フランス料理のフルコースに、ワイン、ウイスキー、ビールなど飲み物は飲み放題である。
風祭は金有に「この費用は何処から出ているの?」と聞いた。
「表向きは、満天倶楽部の親会社。
実は、ここに集まっている自分達が結果的に出しているんじゃないの。」
考えて見れば、秦右時の地中海クルーズだって、
その費用は顧客が払ったお金で賄われていた訳で、ここの費用だって似たり寄ったりに違いない。
第五章-第6話 会員互助会『満天倶楽部』(6)へ続く
銀次郎がここまでに使わされたお金の累計・・・1650万円


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