新宿界隈は朝から冷たい氷雨が降っていたが、
ここヒルトンホテルの特設ロビー受付だけは、
1000人を超えるひといきれでむせ返るような熱気が漂っていた。
男性よりも女性の数のほうがはるかに多く、
とうに女ざかりは過ぎたと思われる年恰好なのだが、
衣装が派手目の性か、妙に華やいで見える。
銀次郎、風祭、金有は自分達が場違いなところにいるような感覚に囚われた。
こんなに大勢では、酒好さんを探すのは一苦労だなと思っていると、金有の携帯が鳴った。
「金有さん、何処にいらっしゃいますか?」
「あっ、僕ですか。今3人で受付の横の階段の側にいます。」
「分かったわ。そこで待ってて。紹介したい人がいるの。今一緒に行くから。」
5分ほど待つと、酒好さんは彼女より年上と思われる女性と一緒に現れた。
「まだ時間も有るし、ここじゃ一寸忙(せわ)しないし、下のロビーに行きましょう。」
と言って、階段を降り始めた。
3人は、後に続いて歩き出した。
下の階には、おあつらえ向きに長いすのソファーが1セット空いていた。
「紹介します。
こちらは私の上で満天倶楽部のPM(プラチナメンバー)のたかなしさとこさんです。」
といって、酒好さんは紹介を始めた。
「初めまして、たかなしです。」
と言って、名刺入れから名詞を取り出した。
「えっ、珍しい苗字ですね。これでたかなしって読むんですか?」
名詞には満天倶楽部PM『小鳥遊里子』と印刷されていた。
「そうなんです。
何でも、鷹がいないので小鳥が自由に遊べるところから、そう読むそうです。
それでね、私結婚する前は当然苗字違うでしょう。
名前は変わらないわよね。
結婚したら小鳥遊里子となったわけ。
でも私気に入ってます。
一度会ったら絶対忘れないでしょう。この名前。」
「いやあ、絶対忘れませんよ。」
「僕達のメンバーを紹介します。
こちらが金山さん。
そしてこちらが風祭さんです。」
「金山です。」
「風祭です。」
「私はこの満天倶楽部は入ったばかりだけど、小鳥遊さんは、
満天倶楽部で長いことPMをやっておられるんですよ。」
「失礼ですけど、PMって何ですか?
僕ら満天倶楽部のこともあまりよく分からないんですけど。」
と風祭が聞いた。
「そうだったわね。
この会はね、SM(シルバーメンバー)、GM(ゴールドメンバー)、PM(プラチナメンバー)と3段階に別れていて、それぞれ特典が違うのよ。」
「あなた達は、今はシルバーメンバーということね。
要するに、登録すれば自動的にシルバーメンバーになれるのよ。」
「シルバーメンバーって何かいいことあるの?」
「シルバーメンバーだっていいことは有るわよ。
ここの会は商品の購入義務は無いけど、良い物がいっぱいあるから、
自然と買ってしまうのよ。
もしあなた方が紹介した人が、MK(満天倶楽部)商品を買うと、
その金額の半分が貴方に配分されるのよ。
紹介した方が紹介した方、つまり孫に当たる方が商品を購入すると、
4分の1が配分されるわけ。
凄いでしょう。
毎月月末に絞めて、翌月の15日に振り込まれるわよ。
その上がゴールドメンバーで、その上がプラチナメンバーになるの。
当然私もこの会に入ったからには、プラチナメンバーを狙うわよ。」
と酒好の鼻息は荒い。
「プラチナメンバーになるには二通りの道があるわけね。
一つは、330人のメンバーを集めること。
自分の子どもが集めたのも、孫が集めたのも当然貴方のメンバーにカウントされるから、
本気になればそんなに時間をかけなくても集められるわよ。
だって、登録するだけならリスクゼロですもの。
ただ、330人集めただけでは駄目なの。
社員登録が必要なのよね。
社員登録にはお金がいるのね。
最低10万円。
でもね、会の宣伝協力費名目で年間36%が支払われるから、
3年以上経てば元金は戻ってくることになるでしょう。
もう一つは一発でプラチナメンバーになる方法ね。
社員登録費を100口以上入れれば即プラチナメンバーになれるのね。
でも入れただけじゃ駄目よね。
会の宣伝協力をしてくれないと、宣伝協力金を払う意味がないでしょう。
そんな方には悪いけど、1年で更新は受け付けないのね。」
「小鳥遊さんは、10年以上PMやってずーっと36%の宣伝協力金を貰っているのよ。
古い人は18年になる方もいるわ。
最高は2億ぐらい入れてるんじゃないかしら。
私もこのプラチナメンバー目指しているので協力してね。
それなりの御礼は考えているから。よろしくお願いね。」
「そうそう、今日来ていただいたのは、会長から新しい発表があるからなのよ。
資本主義経済が根底から覆るような仰天発表をするわ。是非聞いてね。」
小鳥遊里子は、長年にわたって宣伝協力金を貰っており、この満天倶楽部が生きがいになっていた。
第五章-第4話 会員互助会『満天倶楽部』(4)へ続く
銀次郎がここまでに使わされたお金の累計・・・1650万円


銀ちゃんがどうでるか楽しみ〜です。
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さすがsaineiさん、勘が鋭い。
銀次郎がどうやって、料理するかが見ものですね。