風祭は、司法書士ではないが会社の登記や様々な届出は、参考書を見たり、
知り合いの税理士から教わり自分でこなしていたので、大概のことは出来てしまう。
元来、先祖代々の米屋で自分の代になって酒の販売やコンビニの多店舗経営などで、
業績を拡大して行った。
地元でも、事業家として頭角を現していた。
地元の慈善団体の理事長も勤めた名士であった。
そんな風祭が何が因果で、黄山に騙されてしまったのだろうか。
周りから見れば、まるで兄弟のように見えた2人の間にどのような蹉跌が生じたのか、
裁判まで持ち込まれるような亀裂がどうして起きたのか、
当事者が口を開くことは無い。
まあ、それだけ黄山のほうが上手だったのだろうということは推察させる。
客商売が子どものころから板についており、人当たりが良いので、
朴さんも何かと風祭を頼りにし、一緒に行動することが多くなっていた。
「バナジウム水を軌道に乗せたら、次のことを考えなくちゃね。
父の会社じゃ、いくら儲けてもお金が自由にならないので、
会社を作りたいんだけど、風祭さん登記の手続きお願い出来ますか。」
「良いですよ。やりましょう。
それではまず、会社名ですけど、如何します。」
「父の会社は株式会社ハイレックスですから、
僕の会社は有限会社ハイレックスで良いですよ。」
父の呪縛から逃れたいと言う割には、あんまり考えていない社名だ。
本当にやる気があるの、朴さん。
「会社の所在地は何処にしますか?」
「同胞を相手の商売も考えているから、
新宿から、新大久保、中野ぐらいが候補ですね。
中野新橋に良い物件が有るので、そこにしようかなと思っています。
結構広いですから、契約が済んだら、風祭さんも来るといいですよ。」
「有り難うございます。そのときはお願いします。
事業の目的は如何いたします。
日本では、事業目的は幾つ書いても料金変わりませんから、
やりたいと思うものはこの際入れておいたほうがいいですよ。
後で定款を変更するとお金が掛かりますし面倒ですからね。」
風祭は親切に教えてやった。
「ありがとう。不動産業は欠かせませんね。
それと、物販、飲食業ですね。
韓国と貿易もやりたいです。
コンサルタント業もいいですね。
遊技場経営と金貸し業は止めておきましょう。
対外的に余り印象がよくないですから。」
「分かりました。今の内容で、作って見ます。
類似商号の調査しだいでは、
社名を変えなければならないかもしれませんので、2,3別の社名も考えて置いてくださいね。」
このときは、新会社法は施行されていなかったので、類似商号を調べる必要があった。
風祭は、朴さんと行動を共にすることが多くなっていた。
口約束ではあるが、会社が出来たら、経理部長として迎えるからと誘われていた。
おのずと力が入るのは人情である。
150億ウオン小切手の魔力はいつまでも人の心を捉えて離さない。
「風祭さん。印刷屋さん知りません?」
「どうされるんですか?」
「これ見てください。これ韓国人の同胞に配られているフリーペーパーなんですけど、
この印刷をやりたいんです。
私の友達が発行しているんですけど、
この新聞が一番発行部数が多くて隔週10万部出てます。
値段が合えば、発注を出すからと言われているんですけど、
どこか安くできる印刷屋さんご存知ありませんか?」
風祭は、酒のディスカウントをやっていて毎月のチラシ広告費の高さに辟易して、
自らチラシ作成の会社も持っていた。
早速、知り合いの印刷屋に連絡を取って見積を出させることにした。
見積の金額は相当安いはずだが今発注している業者を取替えるほどの価格ではないらしく、
色よい返事はもらえない。
更に安い業者を探して、見積を出したが、結果は同じだった。
第四章-第7話 会社ごっこ(2)へ続く
銀次郎がここまでに使わされたお金の累計・・・1650万円


裁判に持ち込まれる事態になるんですか
みんなツワモノなので、大変なのですね。
どうなるんしょ〜?
プロ意識なんでしょうかね。