今日は店のマスターも交えて、奥の座敷を貸切のような状態で、占領してしまった。
「えーですか。」
さあ、恒例の銀次郎節の始まりです。
「えーですか。
LGが高値で市場を作ってくれたんやで。
こんなチャンスは滅多に無いで。
ワシらはそれに便乗すれば大儲けでけるんや。」
「本当ですよね。何とかこの話まとめましょうよ。」
「えーですか。
17,000ウオンということは、日本円で1500円ぐらいや。
国内価格は380円やで。
せやから、小売価格で朴に販売しても、
朴は1000円以上の儲けが出るんや。
水なんか普通20円も利益が出れば御の字や。
こりゃ、絶対儲かるで。」
「いずれ、LGから圧力が掛かるやろうから、それまでにバッチリ稼ごう。」
「金有が言っていたけど、バナジウムの含まれる水は世界中探しても富士山だけだそうだ。
バナジウムは最近の微量元素の研究で、
人体に必要な必須ミネラルとして注目を浴びているそうな。
中性脂肪・体脂肪・血糖値が下がるそうだよこの水を飲むと。
平たく言うと、肥満に良い、糖尿に良いちゅーこっちゃ。
他のバナジウム水ではそんなことを言ったら薬事法に引っ掛かるが、
この水は何でも、薬業界でも権威のある応用薬理で実証されているから、
ボトルにまで書いてあるよ。」
「へぇ〜、凄い水なんですね!」
「そうだ、試しに水割りにして飲んでみよう。」
「一寸!タンブラーにこの水を入れて持ってきてくれる。」
「えーですか。
いくら白神山地の水が良い、阿蘇山の水が良い、
土佐の海洋深層水が良いと言ったって、
所詮は日本国内でのこと。
海外に行ったら、そんな名前誰も知らんでしょう。
富士山イコール日本でしょうが。
富士山は日本の象徴ですからね。
なんたって、姿かたちがいい。
だからこの水がええんです。
ほかの水とも完全に差別化でけてる。」
翌日銀次郎は、朴さんに電話した。
「どーですか?向こうと連絡取れましたか?」
「ええ、連絡取れまして、今調べてもらっているところです。
もう少し細かいことが分かったら助かるんですが。」
「よっしゃ、分かった。
ほなら、金有呼ぶさかい、一緒に相談しましょう。
明日、どうですか?」
「分かりました。お伺いします。」
翌日、銀次郎の事務所には、銀次郎をはじめ、
黄山、風祭、水玉(このとき水玉邸は売りに出されている最中で、
水玉と銀次郎の仲は決裂していなかった。詳しくは第一章をお読みください。)、
金有が雁首を揃えていた。
「金山さん、水は大丈夫でしょうかね。」
「あかんかったら、他当たったる。
台湾にも話たるで。
台湾は韓国や中国と違って、親日家が多く日本贔屓(ひいき)やから、
この富士山の水やったら間違いないって。
国民党が政権持っとたら台湾貿易が使えるんやけどな。
あっこにはワシ貸しが仰山あるねん。
ところで、水量は足りているんやろうね、金有さん。
輸出しました、在庫がありませんじゃ話しにならんからね。
あんじょう頼んまっせ。」
「大丈夫です。国立公園の中の9つある井戸の内の7つはこのメーカーのものです。
今のところ1つの井戸しか使われていません。
それも90%以上が垂れ流し状態です。
じゃんじゃん売りましょう。
ガソリンより水のほうが高い時代です。
21世紀は水が貿易の最重要商品になりますよ。
世界中のエコノミストが太鼓判を押しています。
僕らはこの水で大金持ちになりますよ。」
そんな話をしていると、チャイムが鳴って朴さんが現れた。
「ようこそ。金有さんは初めてですよね。紹介します。
こちらは、金有さんです。」
「初めまして。金有です。」
金有は名刺入れから、ドクターバナ代理店と印刷された名詞を取り出し、朴に差し出した。
「初めまして。朴大中(パクデジュン)です。金有さんはこの水に力入れてるんですね。」
「そうなんですよ。前の事業が上手く行かないものですから、
今はこの水に全力投球です。
金山社長からは大体のことは伺っております。
なんでも、韓国に有力なコネクションをお持ちとか。うらやましいですね。」
「いえ、大したことありません。
たまたま、向こうでこちらのマツモトキヨシのような形態のドラッグストアーをやっているのがいまして、
それに話を持っていったところ、大変乗り気なんですよ。
ただ、ものすごく慎重な男で、ゴーするまでに時間が掛かるのが難点なんです。
決まってしまえば突っ走りますけどね。」
「その方が良いんじゃありません。
簡単に決める人は、往々にしてやめるのも簡単ですから。
僕としては、長く続けて欲しいですから、慎重にやっていただいたほうが安心です。」
「それで、支払いの件なんですけど、どのような条件ですか?」
「それは、金山社長と決めてください。
僕のほうはあくまでも、金山社長の会社を通じて商談させていただいておりますので。
こちらの意向は全て金山社長に伝えて有ります。」
「分かりました。その件に関しては金山社長と相談します。」
「そうしてください。」
「向こうから連絡があったら、電話入れます。」
そう言い残して、朴さんは帰っていった。
「前より、感触良いですね。大分前身ですね。」と黄山。
第四章-第5話 バナジウムウオーター(2)へ続く
銀次郎がここまでに使わされたお金の累計・・・1650万円


登校ですっ!
このあとどうなるのか
すごく気になるんですけどね〜
なんたって、「会社ごっこ屋」ですから。