銀次郎は、近くのコンビニへ行って、朝食用のパンと新聞を買ってきた。
事務所に戻り、パンとコーヒーで軽い朝食をとった。
食事を済まして、タバコに火をつけた。
銀次郎はかなりのヘビースモーカーで、1日に2カートンは煙にしてしまう。
それも低タール・低ニコチンのタバコは美味しくないと、
専らピースのボックスがお気に入りだ。
本当は、両切りの缶ピースが良いのだけれど、自動販売機では売っていないので、
仕方なくボックスを吸っているのである。
最近はボックスでも自販機に無いことが多いのが不満である。
タバコをふかしながら、日経新聞に目を通す。
新会社法についての解説記事が気になった。
(なるほど、新会社法では資本金は何ぼでもええんやな。
そうか、類似商号規制ものうなるのか。
なになに、払い込み保管証明制度の一部廃止と、どうゆうこっちゃ。
資本金の保管証明が要らなくなり、残高証明で良いてか。
これだと、銭を直ぐ使えるちゅうことやな。
新会社法はじっくり研究する必要があるな。)
そろそろ電話してみるか。
銀次郎は、紅谷の携帯に電話した。
「昨日はどうもね。今日時間取れますか?」
午後新宿で会う約束を取り付ける。
今度は、小金沢に電話を入れる。
小金沢とは夕方、小金沢の事務所で会うことにした。
昼過ぎ、新宿の純喫茶「ゴッホ」の隅っこのシートに銀次郎と黄山、
テーブルを挟んで向かい側に紅谷が座った。
「もうすぐ、例の土地の件いけそうなんで、近々良い報告ができそうですよ。
日本タワーの件も上手く行ってますよ。
幹事会社の見込みでは株価は予定よりかなり上に行きそうですよ。」
「それは、結構なこっちゃ。楽しみにしてまっさ。
早速ですけど、昨日のチョンボ物産の件、あんじょう進めてや。」
「解ってますよ。金山さん。とりあえず2千万程あればいいですよね。
それと車何にします?」
「そやな、ベンツもいいけど、ワシ本まはジャガーが好きやねん。
ワシがベンツなんか乗ったらやくざにしか見えへんしな。」
自分の風貌をよく理解している銀次郎である。
逆に、この風貌で助かったことも何度もある。
「それじゃぁジャガーにしましょう。色はどうします?
カーナビとETCは当然あったほうが良いですよね。」
などと、景気の良い話が続く。
「ワシ免許ないんで、後は黄山と相談してくれ。
いや、免許あったんやけど、3回飛ばしてもうて、それからもう取に行ってないねん。
しかし、折角車が来るんやし、もう一度免許取に行って来ようか。」
黄山は、2人の会話を聞いていて、なんとなく目の前が明るくなった。
(2千万か、半分回してもらえれば助かるな。久しぶりに来週の日曜日はゴルフでも行ってくるか。)
「ゴッホ」を後にした銀次郎と黄山は首都高速に乗り、小金沢の事務所に向かった。
第三章-第11話 詐欺師紅谷の罠(5)へ続く
銀次郎がここまでに使わされたお金の累計・・・1650万円

