紅谷のメルセデスは静かに動き出した。
「日本タワーとは別に、不動産やってる会社があってね、そこが絡んでるんですがね、
例のIT関連の三羽烏の一人、一番若い奴、知ってるでしょう。
あいつもう直ぐ上げられちゃいますよ。
本人も薄々感づいていて、個人と会社で持っている土地やビルなどの不動産を内々で処分して、
海外の銀行の秘密口座に移すらしいですよ。奴は目立ちすぎましたからね。」
「やっぱり上げられちゃうの。可哀想に。」
「この話に、社長1枚かみません?」
「そりゃ、ごつい話やね。」
「そうですよ、手数料だけでも数億円は下らない。
こんな話誰にでもできる話とちがいますよ。
社長と私の仲だから話しているんですよ。
この話は極秘ですから、絶対口外しないで下さいよ。」
そんなやり取りをしているうちに、車は日本タワーの駐車場に滑り込んでいた。
2人はエレベーターに乗り込み5階のボタンを押した。
「ここですよ。ここ。」
「すごいね!最高だね!」
銀次郎はすっかり気に入った。
銀次郎の頭の中には、ここを舞台にどんな仕事をしようかという思いが沸々と浮かんできた。夢はどんどん大きく膨らむ。
「今入っている会社は、直接の契約者じゃないんです。
3Dの映像特許を持っている会社が借りていて、
今の会社にまた貸ししているというわけ。」
「その会社は、どうして使わないの?」
「何でも、次世代のモバイル通信の新事業を手がける為に、
六本木の泉タワーに入るらしい。ワンフロアー貸切で月々の家賃が1600万円だって。凄いね。」
「ここは何ぼや?」
「今入っているテナントは、保証金2千万円、家賃は500万円です。」
「そりゃ〜高いわ。あかんな。」
「その価格は、知らない人ならその通りですけど、社長の場合は違いますよ。
私の知り合いが任されてるって言ったでしょう。
社長なら、半分の保証金500万円、家賃250万円で話しつけてあげますよ。ただ・・・」
と紅谷はその後の言葉を濁した。
「なんやねん。」
「実は、この会社凄い特許を持っていて、日本だけでなくアメリカ、フランス、
イギリス、中国、韓国、の国際特許を取得しているんだ。
来年ジャスダックに上場する予定なんだけど、上場前の審査って厳しいですよね。
会計上200万円ぐらい使途不明金が出ちゃっているんですね。
それを社長の力で助けていただきたいんですよ。
勿論ただとは言いませんよ。この会社の株券を担保につけます。
株券は後で見せますよ。」
この会社の規模なら、200万円ぐらいなんとでもなる金額だが、
欲に目がくらんだ銀次郎には、このトリックが見えてこない。
日本タワーを出て、2人はこじゃれた喫茶店に入った。
紅谷はエルメスのバッグから、先ほどの会社のネーム入りの封筒を取り出した。
「これが株券です。額面5万円で100枚あります。
店頭公開の時には5万円株は5000円に分割されますので100株は1000株になる。
これが公開されれば安く見積もっても1株10万円の値がつきますから、
1億円にはなりますよ。」
銀次郎は、日本タワーを見せられた上で、株券を見せられたものだから、
完全に紅谷のぺーすにはまっていた。
(俺にもとうとう運が向いてきたかな。)
と小躍りしたくなるのを抑えて、
「いいですよ。やりましょう。紅谷さん。あんさんと知り合いになれてよかった。」
銀次郎は両手で、紅谷の手をとり硬く握った。
「とりあえず手付けで300万円、株券を担保に200万円出しましょう。明日取りにきてよ。」
翌日、銀次郎は300万円と200万円の紙(小切手)を2枚切った。
「有り難うございます。領収書は後で持ってきますから。
やっぱり社長を男と見込んで話してよかったです。
外部に漏れるのが一番厄介ですからね。」
「そんなに持ち上げても、何もでないよ。」
「それと、例の不動産の件も間違いなくやりますからね。
ベンツでもBMでも好きな車言ってください。何時でも持ってきますよ。
不動産屋は私の知り合いですし、私はそこの顧問もやっているので、
車は税金対策で落とせますから、社長は気にしなくて良いですから。」
まあ、よく口からでまかせが言えるものである。げに、ペテン師とは恐ろしい。
銀次郎がここまでに使わされたお金の累計・・・1300万円
第18話 紙地獄
へ続く


しかもまったく気がついてない
ほんとペテン師って恐ろしいですね〜
どうなるのか楽しみです。
毎日登校有り難うございます。
次回で第2章最終話になります。
結末がどうなるかは、登校してからのお楽しみ。
目次を全面的に改めました。