黄山は紹興酒の販売の件で、ニンニク百貨店の商品部部長に電話し、
横浜で会う約束を取り付けた。
2人は横浜駅前の横浜そごう1階正面玄関前で落ち合い、
タクシー乗り場に直行し、横浜中華街へ向かった。
久しぶりに訪れた中華街は、以前とはかなり様子が変わっていた。
行き交う人たちは、手に手に中華まんを持って食べている。
ファーストフードスタイルのテイクアウトの店も増えていた。
2人は東門よりは入り、暫く歩いて右側の路地を曲がったところに目的の店はあった。
極彩色の看板には四川料理「黒白飯店」とあった。
「ここだよ。」と部長は店の前に立ち止った。
ドアを開けて、中に入るや従業員に左手の親指を立てて「いる?」と聞き、
2階へ向かって階段を昇っていった。
時間が早かったのか、社長はまだ来ていなかった。
「社長が来るまで、ビール貰おうかな。コップ2つとつまみにザーサイ持ってきて。」
2人が飲み始めて程なくすると、店主が現れた。
「やぁ、部長お久しぶりね。」
店主は流暢な日本語で挨拶し、部長の手をしっかりと握って握手した。
店主は挨拶代わりにビールを注ぎながら「今日は何の用なの?」と探りを入れてきた。
店主は、部長の口利きで、4店舗あるニンニク百貨店の3店舗に出店していた。
このことがばれれば懲戒ものだが、
部長はこの「黒白飯店」からバックリベートを頂戴している。
そんな仲なのである。
「いや、今日は俺の用事じゃないんだ。この男の話を聞いてくれ。」
と言って、部長は黄山を紹介した。
「黄山と申します。部長にはいつも面倒見てもらっているんですが、
今日もお言葉に甘えてついて来てしまいました。」
「黄山君はこの若さで裸一貫、ゼロから事業を始めたんでつい応援したくなるんだよ。」
「実は良い紹興酒があるんですが、買っていただきたいと思いまして。」
と言いながら、バッグの中から紹興酒を取り出して、テーブルの上に置いた。
「これは何年物ですか?値段はいくらですか?」と店主。
すかさず「5年物です。いくらだったら買っていただけますか?」と黄山。
「一寸味見してもいいですか?」
「どうぞ、どうぞ。」と言いながら、黄山は紹興酒の封を切った。
店主は、紹興酒をグラスに注ぐと、まず臭いをかいだ。
次に、目の高さまで持ち上げ、照明の明かりに向けて透かして見た。
暫くグラスを眺めていたが、唇に運び、口に含んだ。
2,3度口の中で転がすようにして、ごくりと飲み込んだ。
「如何ですか?」
「5年物にしては、悪くはないね。」
肝心の値段であるが、
店主は「1本150円ですかね。」と言った。
黄山は「冗談でしょう。人の足元を見やがって!」と内心思ったが、
そこをぐっと堪えて
「仕方ありませんね。口座開設のお土産として言い値で入れさせていただきます。」
と笑って言った。
顔とは裏腹に、心は引きつっていた。
(店のメニューには同程度の紹興酒は、
ボトル1800円(720ml)と書かれているじゃないか。
いくら儲けりゃ気が済むんだよ、因業爺め!)
黄山はテーブルに着くなり、メニューを見て紹興酒の値段を確認していたのだった。
黄山は、いくらで売れても銀次郎にはお金を渡さない腹だから、
元値を割ろうと関係ないのである。
銀次郎には言い訳を考えよう。その時はその時だ。
「それでは、何ケース発注してもらえますか?」
「そうですね。1ケース12本入りですよね。400ケースお願いします。」
「ありがとうございます。いつお持ちしましょうか?」
「何時でもいいよ。手配したら連絡ください。現金で払いますから。」
この後部長と黄山は、黒白飯店でフルコースの四川料理を満喫した。
勿論店の奢りである。
銀次郎がここまでに使わされたお金の累計・・・800万円
第15話 再び、紹興酒(2)へ続く


次から次へと登場してますね〜
銀次郎になんて言い訳するのか
楽しみですよ〜笑
あっ、クリックしときました。
休日なのにご苦労さんです。
本当は誰しも穢れの無い純粋な心で生きられればいいのでしょうけど、生きる為に皆必死なんでしょうね。
まだまだ個性あふれるキャラクター予定してます。