灰田はその足で、新宿歌舞伎町の談話室「ゴッホ」に向かった。
「ゴッホ」は都内に40店舗ほどある有名な純喫茶である。
最近はほとんどがスタバやドトールなどに押されて、純喫茶の数は急激に減少している。
灰田たちにとっては大事な仕事の打ち合わせ場であり、
いつまでも「ゴッホ」が続いてくれるのを願ってやまない。
一般客に混じって、隅の一角を占拠しているのは、
大抵がいかにも怪しげな連中か、一見してそれと判るやくざ風の連中である。
彼らが、なぜ純喫茶を選ぶのか?
なぜ隅っこを選ぶのか?
なぜスタバやドトールじゃないのか?
純喫茶は、自宅では味わえない快適空間を提供する目的で作られているので、
ゆったりとくつろげる。
隣の席とも適当なゆとりがある。
それに比べて、スタバやドトールなどは、コーヒーを提供することを目的としているので、
隣同士がくっついている。
いすが硬いので長居するのには不向きである。
ではなぜ、隅っこを選ぶのかは、言わずもがな、
真ん中の席ではヒソヒソ話をするのに都合が悪いからである。
秘密の話が、筒抜けになってしまう恐れがある。
誰が聞いているか判らないし、目立ちすぎる。
ちなみに、不動産のブローカーはホテルのロビーが定番である。
灰田が「ゴッホ」に着いたのは午後4時を少し回ったころだった。
仲間がいないかと、隅っこを注意して見回すと、
見慣れた顔が、いや頭があるじゃないか。
一番奥の隅っこでコーヒーをすすっている、独特のヘアースタイルですぐ分かった。
薄くなった頭をかつらではなく、フリカケでカムフラージュしているのだ。
黒田政治である。
灰田は「よお!」と、声をかけて、黒田と同じ席に腰掛けた。
席に着くと、ウエートレスの女の子が水を置き注文を聞いてきた。
「ホットコーヒーをひとつ。アメリカンで。」
ウエートレスは注文を繰り返した。
「ありがとうございます。
ホットコーヒーをおひとつですね。
アメリカンでよろしかったでしょうか。」
灰田はこの奇妙な言い回しに違和感を覚えていた。
(全く、近頃の日本語はなってない。)と、心の中でつぶやくのだった。
ウエートレスが下がって行ったのを確認して、
灰田は背広のうちポケットから50万円を取り出し、黒田にチラッと見せた。
すると、黒田は「どお、上手くいったの?」
「細工は流々、仕上げをごろうじろ。」
灰田はにやりと笑って、タバコのヤニで黄色くなった歯を見せた。
銀次郎が仲間に用立てたお金累計 100万円
第7話 刺客1号緑川(1)へ続く


読み進めてます〜
ここは遅刻がないので
またまた、自由登校させていただきます〜笑
ここは、遅刻とりません。
登校自由ですからね。
それと、大体一番乗りになりますから。
あちらは、一番乗り熾烈ですから。