「ところで、さし当たって軍資金が必要なんだけど、ナベちゃん、
幾らか用立てできへんやろか?」
「弘ちゃん、何ぼいるん?」
「せやな、とりあえず50万もあれば何とかなるかな。飛行機のチケット代やろ、
それから中国での宿泊代、ほいで相手との交渉などにもかかるから、
手元不如意ではさびしいしな。」
「50万でええんやな。よっしゃ、50万ワシが都合つけたる。」
「一寸待ってえや。今紙を切るさかい。」
そういうと銀次郎は金庫をあけ、小切手帳を取り出した。
銀次郎は小切手のことを「紙」と言うのであった。
普通、小切手は現金と同じなので、「紙」とは言わないが、
銀次郎にとって小切手は「紙」と同じ感覚である。
その感覚が、銀次郎に思わぬ災いをもたらすことになる。
実は、この時銀次郎はお金には困っていなかった。
不動産絡みで、保証金を約1000万円せしめた後だったのである。
この件に関しては、章立てするかしないか、思案中です。
「弘ちゃん、これ持って行きや。」
と言って、50万円の小切手を手渡した。
「すまないね。ナベちゃん。ほなら、使わせてもらうわ。
直ぐに中国に行って手はずをとってくるよ。」
灰田弘幸はU.S.O企画を後にした。
本当に灰田が渡中したかは定かではない。
その後のうわさでは、中国には行っていないと言うのが主流である。
なんせ、灰田弘幸はペテン師なのである。
それから1ヵ月後、再び灰田が銀次郎の事務所に現れた。
「ナベちゃん。この間は助かったよ。中国に行っていて、
一昨日(おとつい)帰ってきたところだよ。これ中国のお土産。」
と言って、かばんから紹興酒のボトルを取り出した。
「いやあ、うわさに聞いていたけど、中国人のブローカーは手強いね。
1円でも安くと交渉したんだが、奴らもしぶといよ。チクショーめ。」
灰田はいかに自分が苦労して交渉したかを、大きな身振りを交えて熱演する。
流石に、プロのペテン師は演技も上手い。
銀次郎は、灰田のふがいなさをなじろうと思ったが、
灰田の熱演に気持ちとは裏腹に、口をついて出た言葉は、
「しゃーないな、弘ちゃん。一体何ぼで交渉したん。」
「1本50円だよ。これだったら、関税や運賃を乗せても損しないやろ。
それでも向こうのお金にしたら500円以上の価値があるから、
相手も儲かるはずなんやだな。」
灰田は銀次郎の性格を実に良く心得てい、自分を最大限良い奴に仕立て上げるのである。
銀次郎が仲間に用立てたお金累計 50万円
第3話 紹興酒は蜜の味(3)へ続く


手形詐欺とか、詐欺の手口はみんな面白いですからね。
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ネタは結構あるんですが、深刻にならないよう気をつけて、「ぼくちゅう」なみのユーモアを交えて書ければと思っています。
正直『サスケ』は苦しんでいます。
『ぼくちゅう』は私のバイブルになっています。
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