水玉隆は水星銀行から、呼び出しを受けた。
「水玉さん。家の名義が金山銀次郎さんに変更されていますが、何があったのですか。」
銀行員の東田は語気を強めて、水玉に詰問した。
水玉は公正証書を取り出し、説明をした。
金山銀次郎さんから借金をしたが返せなくなり、代物弁済という形で名義を変更したこと。
銀行の住宅ローンが残っていて返済に困っていることを話したら、
銀行もキレイにしてやるというので、公正証書を作ったことを東田に説明した。
「困りましたね。水玉さん。名義変更する前に、当行へ相談してくれなくては。」
「相談したら、お金を貸してくれたんですか。残高が多いので、
しばらくは貸せないといったのは御行じゃありませんか。」
「商売人にとって、お金は血液と同じなんですよ。
停まってしまったら死んでしまうでしょう。」
「ウイルスに感染するかもしれない危険性があっても、
今手術するときに輸血が必要なら、輸血するでしょう。
それが売血による危険な血液と判っていても。」
「とにかく、金山さんと一緒に来てください。」東田は強く言った。
金山銀次郎はやくざではないようだ。
銀行員の東田は報告書を机の上に置くとほっと胸をなでおろした。
水玉邸については、水星銀行が一番抵当権を持って入るが、
やくざがらみになると解決に時間と手間が掛かってしまう。
数日後、水星銀行A支店の応接室に、水玉隆と金山銀次郎の姿があった。
「今日はわざわざ当行へお越しいただいて申し訳ありません。」といって、
支店長代理の南波が深々と頭を下げた。
支店長代理の南波の隣には東田が座っていた。
「金山さん。事情を説明していただけないでしょうか。」
「事情も何も、公正証書に書いてあるとおりでんがな。」
「えーですか。水玉がワシから銭を借りよった。
奴が借りた銭を返せないから代物弁済にしてくれといって、
家の権利書持ってきよった。」
「銀行の抵当権が付いているしょうもないもの、
持ってきても困るといったんやが、これで何とかしてくれちゅうので、
名義を書き換えてあげたんじゃよ。」
「このままじゃ可哀想なので、売却して御行の借金はワシが払ってやろうと思っとるんや。」
「ワシが払うんやから、金利は勉強してもらわなんだら困るで。」
金山の風貌は一見やくざ風。
黒いスーツにえんじ色のネクタイ、エナメルのシューズといういでたちで、
言葉は関西弁。かなりの迫力である。
支店長代理の南波は買い付け証明が出たら、抵当権をはずすことを了承した。
銀次郎は意気揚々と、水星銀行A支店を後にした。
第6話 水玉邸乗っ取り作戦(4)
へ続く

